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第3回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストでグランプリに輝き、芸能界入りした
山信吾さん。ドラマや映画、時代劇、さらに近年は舞台でも活躍中だが、実は芸能界からの引退を決意した時期もあるという。2012年2月、舞台『ビューティフル・サンデイ』に出演する
山さんは、芝居に取り組む姿勢やご家族への思いを気さくに語ってくれた。
取材・文/前川太一郎 写真/藤牧徹也
2012年2月から『ビューティフル・サンデイ』という舞台に出演します。これは女性1人と男性2人、計3人だけで演じる芝居で、しかも男性のうち1人は男女の中間的存在(ゲイ)という設定です。過去にほかの役者さんが演じていますし、テレビドラマにもなっている作品ですからプレッシャーもありますが、ほかの2人と真正面からぶつかりあって、いい舞台にしたいと考えています。
『ビューティフル・サンデイ』は、あるマンションの1室で繰り広げられる3人の人間模様――笑いあり、ほろりと泣かせるシーンありのとてもおもしろい作品です。僕の役どころは、ちょっとわけありで堅物だけど「ふつうの男」。「ふつう」というのはとても難しいですね。僕が演じる戸川秋彦は、共演者2人から投げかけられることに反応していく役なので、どうリアクションをしていくべきか。そこが悩みどころであり、また楽しみな部分でもあります。
紅一点の三枝ちひろ役を演じる瀬奈じゅんさんとはミュージカル『アンナ・カレーニナ』でご一緒したことがあります。『アンナ・カレーニナ』は僕がミュージカルに初めて出演した作品ですが、声をかけていただいたときは「ミュージカル? 無理!」と思いました(笑)。歌うことは好きでしたが、ミュージカルに出られるようなきちんとしたレッスンは受けていませんでしたから。でも、レイヴィンという役にとても惹かれて挑戦しました。ものすごく大変でしたけど、引き受けてよかった。この作品をきっかけに、ミュージカルのお仕事もいただけるようにもなりました。
しかし、「演じる」という行為は難しいですね。僕は毎日のように「役者ってどうやっていけばいいんだろう」と悩んでいます。ほかの人の演技を見て「すごいな」とか「うまいな」と感心したり、自分ならばどう演じようか……と考え込むとあっという間に時間が過ぎていきます。
芝居には正解もゴールもありません。だから、自分を客観視するように努めたり、知らず知らずのうちにマン・ウォッチングをしていて、いつの間にか想像力がふくらんでいたり・・・。悩みがあるからこそ、この仕事はおもしろいんです。
今でこそ役者という仕事をおもしろいと思えるようになりましたが、僕はそもそも「芸能界に入りたい」「役者になりたい」なんて考えた事はなかったんです。
グランプリをいただいたジュノン・スーパーボーイ・コンテストは姉が勝手に応募しただけですし、コンテストの後、事務所にスカウトされたときも「僕は芸能界に向いていないので」とお断りするつもりでした。ところが、当時の社長の熱意に押されて「はい。よろしくお願いします」とつい言ってしまいましたが(笑)。
たとえ強く望んだとしてもなかなか入れない世界ですし、東京の大学に行ったつもりで4年くらいがんばってみよう――そう思って上京したものの、明確な目標もなく、ただ与えられた仕事を一生懸命やっているだけ。「流されている」と感じて、不安だけが膨らんでいきました。
仮にこの世界で生きていて40歳になったとき、自分はどうなっているのか。 仕事がなくてアルバイトしているかもしれない。そんな風に悲観的に考えていたのです。
上京してちょうど4年経った頃、芸能界をやめることを決意しました。アパートを引き払って、実家に帰ったのです。もともと父は自営業で、水道の配管工事業を営んでいました。高校生の頃からその仕事を継ごうと考えていた僕は、実家に戻って作業着姿で一日中溶接したり、穴を掘ったりしていたのです。
ありがたいことに仕事はいくつかいただいていたので、しばらくは新幹線に乗って東京へ行き、仕事を済ませるとまた新幹線で実家に帰ってくるという生活でした。
半年くらいそんな暮らしを続けていたでしょうか。いろいろ考えるうちに「このまま芸能界を辞めるのは中途半端だな」と思うようになりました。この先の人生で何をやるにしても、今のように途中で放り出してしまうのではないかと考えたのです。今度は自分の意志でもう1回がんばってみようと、再び東京に戻りました。23歳のときのことです。
芸能界に入った頃は、まさか自分が東京で暮らしつづけるなんて思ってもみなかった。人生はわからないものですね。
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山信吾(かつらやま・しんご)さん