女優 藤原紀香さん(ふじわら・のりか)Norika Fujiwara MyPremiumTime

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女優として活躍する一方、国内外の人道支援や貧困撲滅にも取り組んでいる藤原紀香さん。3月にはブロードウェイ・ミュージカルの名作『キャバレー』の再演を控えている。主演のサリー・ボウルズ役を「天からの授かりもの」と言う藤原さんに、演じること、そして今の幅広い活動を支えている根源についてうかがった。

取材・文/前川太一郎 写真/藤牧徹也

楽しみな『キャバレー』の再演

役づくりで気をつけているのは、舞台だったら演出家に、映画やドラマだったら監督に、自分の全てをさらけ出して食いついていくことです。イメージとは違うみたいですが、リアルな私は、その役になりきるために必要ならスッピンでもいいし、泥だらけになっても全然構わないんです。役柄に陶酔するくらいでなければ、魂から演じられない、お客様に伝わらないと思っています。映画『ゴースト/ニューヨークの幻』で霊媒師を演じたウーピー・ゴールドバーグが憑依を終えたあとにぐったりするシーンがありますが、私も舞台を終えるとまさにああいう状態になりますね(笑)。あまり器用なほうではないので、常に直球で全身全霊で演じることを心がけています。

2010年1月に出演したミュージカル『キャバレー』が2012年3月に再演します。私にとって、これはまさに「天からの授かりもの」。ブロードウェイをはじめ世界各国で上演されている素晴らしい名作ですし、私が演じる歌姫サリー・ボウルズはライザ・ミネリさん、ジュディ・デンチさん、前田美波里さんなど国内外問わず、そうそうたる俳優の方々が演じてきました。

なので初演のときは「たいへんな役をいただいてしまった!!!」とプレッシャーも感じましたが、再演を控えた今はとても楽しみなんです。それは、魂から演じたサリーは、私の身体のなかにもうしっかりと刻み込まれているから。私も、そして共演する方々もそれぞれの現場でこの2年厳しい経験を積んでいますし、サリーと恋に落ちるクリフ役は表現力豊かな期待の大型ニューフェイスの大貫勇輔さんが新たに演じることになりました。どのような化学反応が起きるのか、考えるだけでワクワクしますし、私自身も演出の小池先生にどんどん前回にはなかったアイデアも出しているんです。歌もパワーアップしていますし、エネルギー溢れた新たな「キャバレー」になりそうです。

舞台をやっていて「幸せだな」と思う瞬間は2つあります。1つは「観に来てくれたお客さまに心から喜んでいただけたとき」。私もミュージカルが大好きで国内外問わず、よく観に行きますが、喜劇でも悲劇でも、スキップして帰りたくなるようないい舞台を観られたときは本当に幸せです。たとえハッピーエンドでなくても「愛って大切だな。」としみじみ思いながら家に帰って、お風呂に入りながらもう一度セリフなど思い出してまたジーンとしてしまうようなときも最高の気分。この時代、けして安くはないチケットを買って舞台を観に来てくださるお客さまに、そう思っていただけるのはこの上なく幸せですから、一期一会の皆さんに届くよう、魂からサリーを生き抜きたいです。

もう1つの幸せな時間は、美味しいものを食べて、美味しいお酒を飲んでいるとき!(笑)。皆さんもそうじゃないですか?上質な作品をつくりあげるために、苦しみをともに乗り越えてきた戦友たちと「乾杯!」と喜び合う時間が私は大好きです。そういう瞬間をまた迎えるためにも、全身全霊でサリーを演じて、前回以上にエネルギッシュでパワフルな『キャバレー』をお魅せいたします。

傷ついた人を勇気づけられる存在に

さまざまな人の役を演じ、今のように取材を受けたり撮影をしたり、その繰り返しは大変だけれど、苦ではありません。自分の好きな仕事に就けて、生きているなんて幸せじゃないですか。私が東京に出てきた頃は、その日のご飯を食べるにも事欠くような毎日でした。

神戸に住んで大学に通いながら、モデルのお仕事があるときだけ東京へ行く。そういう中途半端な生活をやめて大学卒業後、芸能界に飛び込んだのは、1995年阪神・淡路大震災のときの、経験がきっかけです。

私の実家に大きな被害はありませんでしたが、家族は怪我をして周りはもっと大変な事態になっていました。私は元気な若者を集め、避難所である体育館や公民館に出かけて、お年寄りの肩をもんだり、知人を通してかき集めた薬を配ったりしていました。でも1月なので本当に寒かった。

ところが「隣の街にあの有名な人が元気づけに来てくれたよ」「私は握手したんだよ!」という話を聞いた瞬間、冷たい床の上で毛布に包まって震えていたおばあちゃんの頬がふわっと紅潮し、「ありがたいねえ。もう少し頑張ろうね」と。絶望的な状況でも「誰々が来た」という話を聞いただけで、勇気が出て、明日も生きていこうとする希望が少しでも湧く。

そのとき気づきました。今は両親に反対されているけど、私が目指している世界は演じたりテレビに出たりするだけではなく、傷ついた人々が未来に向かって足を踏み出すための後押しができる光にもなれるのだと――。私は「仕送りも何もいらない。東京へ行って夢を叶える努力をしたい。」と2か月かけて両親を説得し、1995年3月に上京しました。

とはいうものの、最初の頃はどんなオーディションを受けても落ちてばかり。行く先も見えず、辛かったし、すごく落ち込みました。でも、そんな私を支えたのは「私の言葉がみなさんに届くようになったら、世の中の役に立つ何かを普通にしていきたい。」という思いでした。

その後、小さなチャンスやご縁をひとつひとつ大事にすることで、少しずつ仕事が繋がってきた。ところが数年間は、どうすれば本当に誰かの役に立つのか、私は何ができるのかがわからなかったんです。

7年が過ぎ、アメリカ同時多発テロ事件「9.11」が起きました。

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プロフィール

女優 
藤原紀香(ふじわら・のりか)さん
1971年兵庫県生まれ。大学在学中の1992年に第24回ミス日本コンテストでグランプリを受賞。1995年の阪神・淡路大震災を経て上京し、芸能活動を本格化。2002年アフガニスタンに2週間滞在し、帰国後はアフガニスタンの子供達のためのチャリティー活動を開始。2006年国連スタッフと共に独立運動の騒乱つづく東ティモールで写真取材を敢行。 2007年日本赤十字社の広報特使に就任。2008年はバングラデシュに赴き、ハリケーン被害を受けた村を取材。2009年、ケニアの子どもたちの現状を視察。 近年、自ら立ち上げた「Smile Please ☆ 藤原紀香 世界こども基金」を通じて、被災地をはじめ、国内外の人道支援を行う。2009年より、『ドロウジー・シャペロン』『マルグリット』など毎年ミュージカルに主演。2012年3月、ブロードウェイ・ミュージカルの世界的名作『キャバレー』の再演を控えている(主演/サリー・ボウルズ役)。