究極の選択として「毎日食べてもいい料理は?」とみんなと話す機会がよくあります。そんなとき、私はいつもやっぱり決まって「寿司」と答えます。毎日食べたくて、でもお値段が高くて……。フレンチもイタリアンも好きだけれど、この齢になると……やっぱりお寿司が一番なのです。
でも、どこに食べに行けばいいかもわからないのが実際のところ。今回ご紹介する「むらさき寿司」さんは、ご縁が生まれてからもう20年近くになりますね。それほど頻繁には伺っていませんが、銀座でお寿司をと思うならば、少し遠いけれど向島の「むらさき寿司」に行きたいのです。住所も趣のある向島にありますし、言問橋からは5分~10分ですから、時間があればゆっくり歩きながらお店まで行くようにしています。
そして肝心のお寿司! 私が批評するのもおこがましいのですが、とにかく酢飯がおいしいと思います。もちろんネタは新鮮で、うまみが強い。
お仕事もしっかり丁寧にされていて、煮ハマグリ、こはだ、アナゴなど、どれをとってもそれぞれのうまみが極上の味に引き出され、しかも気取っていないのがいいのです。素材の味を引き立たせるようにされていますね。
私が絶対にカウンター席に座れるようにお願いしているのは、ご主人のお人柄がとても粋だから。知識人であるご主人から、魚の話をうかがいながらその魚をいただく……。とっても勉強になりますね。
お高くとまってもいず、空気もとてもよい。あまり世間話や噂話はしませんが、ご主人の仕事(料理)に対するいろんなお話はとても楽しく、料理をよりおいしくしてくれます。いつまでもいさせていただきたくなります。
げんに私の主人もちょくちょく仕事関係の方と一緒に出掛けたり、同僚たちの慰労にとなにかにつけて通っている様子です。そんなとき、主人も自分だけが行くのは気が引けるのでしょうか、必ずお土産としてお寿司を持って帰ってきてくれます。
それがまたおいしい。たとえ夜中の12時を回ろうが、夕食をしっかり食べていようがなんのその! ビールを開けてまたまた握りをいただくことになります。
ほんとうにおいしいんですよ。特にお土産の箱は高級。そして、包みも箸もきちっと美しい姿。心が沸き立つ思いになりますね。そんなところも「むらさき寿司」が大好きな理由の1つです。
若いうちは、フレンチレストラン、イタリアン、中華もおなじみにならずにいろんなところに出かけては店リストをつくったりもしました。でも、この齢になると、まずリラックスできる、気持が楽になれて料理を楽しむことができる、ほんとうに行き慣れたところが優先的になりますね。そんな要因を心地よく受け止めてくださり、心の間をうまく埋めてくださる、いわゆるさりげない距離感がたまらなくうれしい。ときにはカウンターとの距離も縮まったり、また距離ができたりと、ご一緒している人間たちの輪をつくり、乱さず、盛り上げる。そんな日本のカウンターで食べる寿司は、ほんとうに素晴らしいと再認識しています。
何かいいことがあったり、またお客さまにどこか案内したいときは、迷わず今も「むらさき寿司」を選ぶ私です。今日も「行きたいな~」と思いながらペンを走らせています! 「食べた~い」と叫びながらね。
(撮影/藤牧徹也)
店舗DATA
むらさき寿司
住所:東京都墨田区向島2-9-15
電話:03-3623-3962
営業時間:12:00-14:00、17:00-23:30
席数:カウンター10席、小上がり8席、
2階(座敷)15席
定休日:毎週水曜日
アクセス:京成押上線・都営浅草線・東京メトロ
半蔵門線・東武伊勢崎線「押上駅」(A3出口)より
徒歩12~13分。
もしくは「浅草駅」からタクシーを利用
※来店前に電話にて要予約


料理研究家/株式会社ファミリークッキングスクール代表取締役