時間帯によって異なるまちなみの風景「アルカトラズ島から見るサンフランシスコ」(アメリカ・カリフォルニア州)旅行ジャーナリスト小暮祥子さん ThePremiumView

霧に浮かぶジオラマのような坂のまち

 サンフランシスコのベイエリア、フィッシャーマンズ・ワーフの沖3kmの地点に浮かぶ断崖絶壁の孤島「アルカトラズ島」。サンフランシスコの街から眺めると軍艦のように見えるこの島は、かつては連邦刑務所のあった監獄の島だった。別名“悪魔島”とも呼ばれ、島を取り巻く早い潮流と冷たい水温のため、脱出不可能の島と言われていたが、この刑務所からの脱出を試みた3人の男の実話をもとにした映画も有名である。あの暗黒街の帝王アル・カポネやマシンガン・ケリーなどもこのアルカトラズ島に投獄されていた。
 現在は、アメリカ合衆国国立公園局が運営するゴールデンゲート国立レクリエーション地域の歴史地区となっており、一般の観光客にも公開されている。サンフランシスコでも1、2を争う人気の観光スポットであり、夏場や週末などは予約なしでは島に渡るフェリーに乗ることができないほどだ。
 私がこのアルカトラズ島を訪れたのも、夏の観光シーズン真っ盛りのころだった。早朝のpia33(33番埠頭)に到着すると、フェリーを待つ人でごった返している。予約は済ませていたものの、遅れてはいけないと少し早めに到着したのだが、さすがに人気の観光スポットとあって、すでに多くの観光客が列をなしている。皆がカメラを片手にガイドブックを見ながら期待に胸膨らませているようだった。
 やがて誘導されて船に乗り込む。夏でも朝は寒いと聞いていたので薄手の上着を羽織ったのだが、海上に出ると想像以上に風が強く、体感温度はさらにぐっと下がる。冷たいと感じるほどで鳥肌が立つ。
 「霧のサンフランシスコ」と言われるほど、朝のサンフランシスコは霧が濃い。なので肝心の景色が実は見えにくいのだが、これもまたこの街らしい光景といえるのだろう。往路の船上からはすぐそばにあるゴールデンゲートブリッジすらもかすんで見えにくいほどだったが、時間とともに霧が晴れていく様子が見られるのも、朝の便を利用すればこその醍醐味だろう。
 振り向くとサンフランシスコの街、それは霧の中にぽっかり浮かび上がる島のようにも見え、幻想的な光景の中にジオラマのような“坂の街”を実感する。間近で見るそれとはまた違った印象だ。街の頂上から海に向かってまっすぐに伸びる数本の坂道。海上に出ないと見られない、この朝の静かな光景が私の中でのサンフランシスコをイメージする映像となって今も記憶に残っている。

立体感ある夜景を望めるビュースポット

サンフランシスコ湾に浮かぶアルカトラズ島。サンフランシスコ名物のケーブルカーからも、その姿を望むことができる アルカトラズ島では、英語が苦手な私にもありがたい日本語のオーディオがレンタルできる。この案内は臨場感たっぷりで、また島内を効率よくまわれるので利用してよかった。
 監獄ツアーをすっかり満喫し、屋内から外に出ると、朝の霧がうそのようにスッキリと晴れわたった青空。視界は良好で、サンフランシスコの街もくっきりと見てとれる。平坦な地であれば、これだけ離れていれば横からの景色しか見られないが、坂の街だからこその立体感ある風景が楽しめる。
 ちなみに、このように朝と昼とでは景色の印象も見え方もまったく違うのだが、ナイトツアーに参加すれば印象はまたがらりと変わる。アルカトラズ島から見る夕日も美しく、赤いゴールデンゲートブリッジは夕日に映える。そして街にライトが灯りはじめると、いくつものビルが映し出され都会の様相に。そのためアルカトラズ島はサンフランシスコの街の夜景を一望できるビュースポットとしても人気が高い。
 どの時間の便で行くか。これもアルカトラズ島からの景色を楽しむための重要な選択肢の一つなのだ。

プロフィール

旅行ジャーナリスト
小暮祥子(こぐれ よしこ)さん
静岡県三島市生まれ。社会人時代、会社のスキー部に所属し大会に出場。国内のスキー場&温泉情報、さらに海外のビーチリゾートといった旅行情報を自身のサイトで公開していた。その後、レジャー施設の広報担当の職を経て出産。旅行ジャーナリストとして、特に働く女性(子連れファミリー含む)を対象とした旅行を考え、各メディアに出演・執筆活動をする傍ら、講演活動も行う。2010年から株式会社アクトパスに所属し、旅行業界と温浴施設を対象にセグメントマーケティングコンサルタントとして活躍している。